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「━━てください」 「ん?なんと言った?」 「アーサー様!取り消してください!」 マリーベルは勢いよく、はっきりと言葉に出す。 「アーサー様、私のことは何と言われようと構いません。 ですが、ニコライ様のことを、それも本人のいないところで、貶めるような発言はお控えくださいませ」 マリーベルは頭に血が昇っていて、まるで別人のように言葉を紡ぐ。 「アーサー様、おっしゃいましたよね? せめて普通になれと。 私は、変わろうと、努力しようとしているのです。 時間をかけても無理かもしれません。 それでも、自分自身を変えたいとそう思えるようになったのは、ニコライ様に出会えたからです。 ニコライさまは、決して私を口説くような不誠実な方ではありません。素晴らしい方です。 そんなニコライ様の妹のミシェル様も素敵な方です。 なので、どうか、アーサー様、もう苦しまないでくださいませ。 いつも眉間に皺を寄せていらっしゃるのは、私と会うのがお嫌だからでしょう? 父から何か言われたのでしょうけれど、私が何とかいたします。 ご自分の気持ちに正直になってくださいませ。 私は、お二人のお邪魔になりたくはないのです! 本当の悪女には、なりたくありません。 何度も申し上げていますように、この婚約のお話しは辞退させてくださいませ。 私は、いつでもアーサー様の味方です。
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