Cと30

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「良くわかんねぇって。なんだそりゃ」  マルソーの歯切れの悪い答えに、苛立ちを隠ないズィオは問い詰めるような顔を近づけた。 「言ってる意味がわかんねえな。ターゲットの夫婦に返り討ちにあって、それが格好悪いから誤魔化してんじゃねぇのか?」  マルソーを挑発するようにズィオはそんな言葉を投げた。だがマルソーは、そんなズィオに反発する事もなく、ただ困惑した目を向け、小さく首を振った。 「標的は始末しました、それは信じてください。問題はそのあとなんすよ」  マルソーはどこか宙を見るような安定しない視線をズィオに向けながら、自分と相棒のグラッパの身に起こった事を語り始めた。 「俺らがターゲットの家に着いたのは、今日の昼過ぎです。コンテの勤めてる高校が休みで、サビーニは自宅を事務所にしてるから、二人揃って始末できて効率が良いって、グラッパが言ってたんで」  実際、夫婦とも揃って自宅にいましたと、マルソーは言った。 「夫婦を始末するのは簡単でしたよ。言っても素人ですからね、俺やグラッパの相手じゃないです。それと、子供部屋に娘も居たんで、捕まえました。パパやママのところに送ってやろうか、連れて帰ってどっかに売り飛ばそうかって話をしてたんですけどね」  そう言ったマルソーは、ほんの一瞬、下卑た笑みを見せた。 (笑える話じゃねぇだろ)  ズィオは心の中でそう悪態をついたが、悪党の態度としてはマルソーの方が正しいのかもしれないと思い、口には出さなかった。 「事前に調べた限り、夫婦には八歳になる娘の他に、もう一人、十三歳になる息子が居るって聞いてたんですが、そのときは自分の学校に行ってたのか、家には居ませんでした。で、俺らが娘をどうしてやろうかって話をしてるときに、玄関が開く音がしたんです」  マルソーの顔が、苦々しげに、そしてどこか恐ろしいものを思い出すしたように歪んだ。 「チャイムも鳴らさず入ってきたんなら、息子の方じゃねえのか?」  そう尋ねるズィオに、マルソーは苦しげな顔で目を閉じながら、大きく頷いた。 「俺もグラッパもそう思いました。で、グラッパの方が、自分が始末してくるからって、子供部屋を出ていきました。でもしばらくして、銃声が2発聞こえたんです」 「音消しもしねぇで撃ったのか」  バカなやつだと、ズィオは元弟子の不用意な行動を心の内側で罵った。 「俺もそう思ったんです。家の周りは割りと静かな住宅地だったんで。それで、注意してやろうと思って部屋を出て、玄関に向かったんですよ、そうしたら、グラッパの奴が血を流して倒れてたんです」
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