Cと30

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 事件の経過を上申したズィオに与えられた指示は、子ども達が送られたであろう養護施設の特定と張り込みだった。  カプランは子どもと言えども容赦はしない。施設を見張れと言うことは、そう言うことなのだろう。  子ども達が送られた児童養護施設の特定は、その筋に伝手がない事もあって少しばかり難儀したものの、どうにか割り出す事が出来た。  そして、ようやく見つけたその施設を、ズィオが実際に張っていると、期待どおり子ども達の姿を目にすることができた。  両方とも、直接会ったことはもちろん無かったが、組織がどこからか用意してきた写真のお陰で顔くらいはわかっていた。  妹の方は、溌剌とした笑顔に亜麻色の長い髪が映える、中々に可愛らしい少女だった。  その行動も見た目に違わず積極的なのか、常に彼女の周りには子ども達の輪が絶えなかった。皆一様に笑顔でいるのを見ても、彼女の人となりが想像出来た。  とても親を殺されたばかりとは思えないほど明るく快活に振舞っていたが、そうでもしていなければ、かえって負の感情に押しつぶされてしまうのかもしれない。そう考えると、少女のいじらしさがズィオの胸をついた。  対照的に、兄の方は外に姿を見せることすら滅多に無かった。たまに現れたかと思えば、言いつけられたらしい用事を済ませるとすぐに建物の中に引っ込んでしまう。  その顔つきも、何がそんなに気にくわないのか、常に無表情というか、無愛想を貫いている。これはこれで、大変な目に遭ったあとの子どもにしては、らしくない行動に見えた。  必要なこと以外は喋らずにいるようで、どことなく施設の職員も接しづらそうにしているのを、ズィオは察した。 (あいつがBとマルソーを…、あんなのがねぇ)  ズィオは愛想の無いその少年の姿をまじまじと観察した。  上背はそこそこ有るものの、身体つきはお世辞にも頑強とは言えない。むしろ痩せ型で、大男のBを相手に出来るとはとても思えなかった。 (おもしれぇな)  ズィオは不謹慎だと思いつつ、ターゲットの少年に単なる哀れみ以上の興味を引かれた。  そうして、子ども達の様子を張り始めてから数日が経った頃、カプランからそろそろ始末をつけるようズィオに指令が下った。 (仕事だ、仕事…)  すっかり見慣れた養護施設の古めかしい建物を遠くから眺めつつ、ズィオは気の進まない仕事の前に唱える呪文を、心のなかで復唱した。  もちろん、期待したような効果など得られる筈もなく、心に重たい何かが張り付いたまま、ズィオは車を降りた。  ただ、始末をつけろと言っても、どうしたものか。組織の上の連中は簡単に言ってくれるが、ターゲットの兄妹は今のところ、施設の外に出てくる気配はない。  本人達が警戒しているのか、あるいは施設や児相の人間が、しばらくは施設の敷地から出るなと注意しているのか。どちらにしても、二人だけを始末する機会は中々巡って来そうになかった。  正面切って乗り込むわけにも行かないと、ズィオが愛車に寄りかかりながら思案にくれていると、施設の中が何やら騒がしくなり始めた。
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