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「そこに倒れてる兄ちゃん、ここの職員だろ?で、妹さんに乱暴しようとしたクソ野郎でもある。その結果、お前さんに制裁を受けた。てところか?」
ズィオの問い掛けに、エディは何も言わずにただ睨み返すばかりだったが、ズィオはその態度を肯定と受けとる事にした。
「手元で震えてるおばちゃんについては、まぁそこの兄ちゃんを殴り倒すところを見られて止む終えず人質に取ったのか、或いは…」
言葉を切ったズィオの目に、女性職員の目元のアザが見えた。
「あぁなるほど、そのおばちゃんも共犯、ないしは黙認してたってところか」
納得したように、そしてどこか探りを入れるように、ズィオはエディへ言葉と視線を向けた。だが相変わらず、エディは無表情を貫いている。
「そんな怖い顔すんなって。あと、おめぇは何もんだって思ってるだろうが、まぁお前さん達のご両親の絡みだと言ったら、察しはつくだろ」
ズィオがそう言ったか言わないかというタイミングで、エディの手にしていたピストルの銃口がまっすぐにズィオに向けられた。
表情の無い筈のエディの瞳が、より殺気を帯びてきたようにズィオには見えた。
「やめてくれって言っても、聞いちゃくれないだろうな。仕方無いか。実際、俺はお前さん達のことを始末するように言われて、ここを張ってた訳だしな」
エディとアリアナを交互に見ながら、ズィオはそう言った。
アリアナの顔色が、これ以上無い程に蒼くなり、硬直した身体はもはや震える余力すら残っていないようだった。
「怖がらせて悪いね、お嬢ちゃん。でも安心しな」
ズィオはそう言うと、被っていた帽子を脱ぎ、それからセーター、シャツ、そしてスラックスの順番で服を脱ぎ始めた。
下着だけの姿になったズィオに、アリアナは理解が追い付かないのか、小さく揺れる瞳をこちらへ向けていた。
エディは相変わらず表情を変えること無くズィオの方へ銃を向けていたが、ズィオにはエディが何を思っているかはどちらでも良かった。
「ほらな、丸腰だ」
両手を広げて、ズィオは身体全体をエディ達に見せるように、くるりとその場で回って見せた。敵意は無いし、命を狙ってここに来たのでもない。それをわかってもらえれば良かった。
「ちょっと話がしたかったんだよ。あんた達とな」
ズィオの言葉に、アリアナは恐怖と困惑のない交ぜになった顔を見せながら、隣で銃を構えたままの兄とズィオとの間で、助けを求めるような視線を行き来させていた。
エディの方は変わることの無い無表情を貫いていたが、自分の思わぬ行動を怪訝に思っている筈だとズィオは考えた。
「うちのがあんた達のご両親を殺った日の事でな、確かめたいことがあったんだよ」
ズィオはエディの射ぬくような視線を受けながら、話し始めた。
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