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ズィオは出来る限りゆっくりと、しかしはっきりとした口調でエディに向かいそう言った。
「うちの殺し屋二人を制圧したのはお前さんだろ、大したもんだよ。そんなプロの殺し屋二人を這いつくばらせる奴の話を聞きたくなってな、こうして丸腰でお邪魔したのさ」
ズィオの軽妙でどこか惚けた語り口に、それでもエディは表情一つ崩さず銃を向けたままだった。少しでも心を開いて、向こうから話をしてくれればと思ったが、望みは薄そうだとズィオは悟った。
「そんな怖い顔しなさんな。まぁ、そっちが話したくねぇなら、ちょっと俺の推測を聞いてくれ。あくまで推測な」
ズィオはそう言うと、近くにあった椅子を引いて腰掛け、話し始めた。
「お前さんは家に着いた時から、なんとなく妙な気配を感じていた。まだ昼過ぎなのに、弁護士事務所を兼ねているはずの家は静まり返っている。事務所は営業しているはずなのに灯りも点いていない。母親だって今日は自分より早く帰っているんだから、もっと賑やかな声が聞こえて来てもいいはずだ。そう思って家の周りを眺めていると、裏手に濃いスモークガラスの黒いVANが停められている。いかにもその筋の人間が使ってそうな、厳つくて如何わしい見た目の車だ」
そこで一度言葉を切ると、ズィオは足を組みながらエディの様子を伺った。するとエディは、銃口の向く先をズィオから外し、再び自分ががっちりと抱え込んでいる職員の方へ向けた。
女性職員の小さな悲鳴を聞き流しながら、ズィオはエディが話の続きを催促していると考え、再び口を開いた。
「何かあるとわかったとしても、詳しい様子まではわからねぇ。お前さんはそう思って、最初は窓の外から家の中の様子を観察した。そこで見ちまったんだな」
ズィオはそこでまた話すのを止め、アリアナの方をちらりと見た。エディは窓の外から、変わり果てた両親の姿を目撃したのだろう。だがそれを、敢えてこの場で口に出すこともないとズィオは思った。
「お前さんはすぐにでも家の中に飛び込んで行きたい気持ちだったろうが、中にはまだ両親を殺した奴が潜んでいるかもしれないと考えて、出来る限り物音を立てずに家のドアを開けた。そこで、二階から聞こえてくるうちの連中の会話を聞いて、家の中に押し入ってきたのが二人だけだとわかった。妹さんがそいつらに捕まっているのもな。妹がいなけりゃ、その場で外に逃げて警察に通報する手もあったろうが、お前さんは自力で妹を助け出そうと考えた。だがそのためには、まず殺し屋どもを一階まで誘き寄せて、妹から引き離さなきゃならない」
そこであんたは一計を案じた、だろ。ズィオはエディにそう問い掛けた。
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