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「あんたは敢えて大きな音を立てて、玄関の扉を閉め直した。上の二人に自分が帰って来たことを知らせるためだ。思ったとおり、一人がのこのこ階段を下りてきた。そうだろ」
ズィオはエディに尋ねたが、相手は何も言葉を返さず、相変わらずただじっとズィオを睨み付けていた。
頑なだな、まぁいいさ。何か会話の糸口をと思ったが、ズィオはあきらめた。
「それにしてもだ、そもそもお前さんはどうやって、Bみてぇな大男を制圧した?確かにたっぱはあるし、現に今も大人二人を人質にしてやがる。中々のもんだと感心してるが、それにしたって相手はプロだぜ」
素直な疑問を、ズィオは口にした。すると、今までだんまりを決め込んでいたエディが小さく口を動かした。
「銃口を向けたまま、顔のすぐ前まで銃を近づけたから、奪った。かなり油断してたから、行けるかもと思ってやったら、いけた」
表情ひとつ変えること無く、必要最低限のことだけを端的に、過不足無く伝える様が、なんとも言えず生意気だった。
「行けるかもって、いやいや」
何でもない事のように言っているが、言葉で言うほど簡単なことではない。
事実を聞くほどに、かえって信じられない気持ちが強くなってきたが、相手がそう言っているのなら信じるより他無いと思い、ズィオは再びエディに向き合った。
「銃を奪ったお前さんは、Bの太腿を撃っている。足を撃ったのは自由に動けないようにするためか?」
いつの間にか、自分が尋問をするような低い声を出していることにズィオは気付いた。相手は年端も行かない子供の筈なのだが、こいつに隙を見せてはいけないと、ズィオの無意識が働きかけている。
「撃ったのは足だけじゃない。利き腕の肩も撃った。足だけじゃ完全に自由は奪えない。それから、うずくまった相手の後頭部を殴って気絶させた」
簡潔に、しかしどこか捲し立てるようにエディは語った。これで自分が言うべきことは全て言ったと言わんばかりに。
「頭殴って気絶させるのだって、それなりのコツってのがいるぜ?まぁいいや、しかし、肩まで撃ってたのか。そういや、マルソーも二発の銃声を聞いたって言ってたな」
若い殺し屋の怯えた顔を思い出しながら、ズィオはそう言った。
それから、その後の流れを大まかに自分の頭の中で整理した。
恐らく、銃声を聞いたマルソーが降りてくるのに気付いたエディは、扉かなにかの陰に隠れて、その様子を見ていたのだろう。
そして、目の前の光景に狼狽し周りに注意を払う余裕を失っていたマルソーの後頭部を…
「ガツン、か…」
口に出してみても、いや、口に出してみるほどに、やはり信じられなかった。
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