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「あんたの口から、何があったのかはっきり聞けて良かったよ。でもまだ信じられねぇな」
少しだけ余裕を取り戻したズィオは、いつもの軽い調子でエディに語りかけた。
「俺はあの時起こったことを、そのまま話しただけだ。信じないならそれでいいし、信じて欲しいとも思わない」
可愛げの無いきっぱりとした口調で、エディはズィオにそんな言葉を返した。
「そうかい、まぁいいや。で、あんたはことを終えた後、駆けつけた警察官に適当に対応しつつ、親の知り合いでもある児相の職員にも連絡を取った。児相には俺らの手が及ばないってわかってたからな。どこでもいいから児童養護施設に入れてもらって、ほとぼりが冷めるのを待とうって考えだった、だろ?」
ズィオの問い掛けに、エディは相変わらず肯定も否定もせず無言を貫いていたが、ほんのわずかに、その灰色の瞳が苦々しく曇ったようにズィオには見えた。
「素人の、しかもガキに身内をやられて、面子を潰されたカプランが黙ってるわけがねぇ。とはいえ、そういつまでもガキ二人に拘ってるわけにもいかねぇ。お前さんは俺らと我慢比べするつもりだったんだろうが、誤算があった」
ズィオはエディの傍でまだ気絶したままの男に目をやった。
「妹さんにちょっかい出されて、我慢出来なかったんだな」
ズィオの言葉に、アリアナがびくりと身体を震わせ、それから恐る恐るエディの方へ視線を向けた。
悲しそうにも、申し訳無さそうにも見える彼女の顔が、ズィオの心を重くした。
余計なことを言われ、エディは機嫌を悪くしたのだろう。ズィオに向ける眼差しが一層険しくなったような気がした。
それでも、ズィオは話を続けた。言っておかなければならないことがあったからだ。
「本当はこんな騒ぎ起こしたくはなかった。お前さんはそう思ってる。だが妹さんの方も、自分が我慢さえしていれば良かったと思ってる。でもそんなんじゃ、二人とも不幸な気持ちのままだぜ」
エディとアリアナを交互に見ながら、ズィオは言った。エディの鋭い視線が、わかったような事を言うなとズィオを責め立てていた。
そんな視線を受けながらも、ズィオは落ち着いた声で言葉を繋いだ。
「そんなお前さん達に提案だ。俺の外国にいる知り合いにな、子供のいない夫婦に里子を斡旋してる奴が居るんだ。外国の里親だって紹介してくれる。妹さん、そいつに任せてみないか?」
どうだ?と、ズィオはエディの顔を覗き込むように見つめた。
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