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わからない だから怖くて 躊躇する 打ち寄せる 波に足すら つけられず 踏み込んだ (おの)が足跡 つく不思議 引き返す 波に洗われて 消えていく あと一回 腰がひけても踏み出して ついた跡 やはりあっさり消えていく くり返し 跡をつけては また消され そのうちに 濡れる足先 気にもせず 足元の 触れる砂地の感触が 進むほど 違うことまで 感じ取り 進みゆく 先は果てなく 広いこと 畏れれど すでにこの身は 濡れそぼリ 見えるもの 感じ取るもの 触れるもの もう一回 同じものには出逢えない 波が来て 引く瞬間に キラとする その時を (のが)すものかと 目を開き 手を伸ばせ たとえ その手に出来ずとも 何回も 跡をつけては 消されても その瞬間(とき)は くり返したその事実こそ 刻まれて いつか ふとした時に また 引いた波 おまえのなかの その浜で 奥底に  消せぬ跡とし 光るだろう あと一回 あと一回、と 繰り返せ いつの日か 笑顔浮かべて そこに立ち 揺るげども これが あたし と 言えるまで 繰り返せ 何度消されてしまえども 跡遺せ 踏み出せ 踏み込め 踏みしめろ これが あたし だ こんちくしょう!
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