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ヒルリアの困惑
「いかん! これはいかん……っ!!」
ヒルリアが我に帰ったのは、一日の行事が全て終わって、ベッドに寝っ転がったその後だった。
「私は一体何をしていたんだ!?」
午後の記憶が一切ないのに気づいて、ヒルリアはガバッと上半身を起こした。その手がわなわなと震える。
「あの公子の事をずっと考えていた……!? なぜだ?? あんな吹けば飛ぶような少年に何の脅威があるというのだ!?」
間違いなく、剣をとれば自分の方が強い。あんな、子供からやっと脱皮しようとしている年齢の少年に脅威を覚える必要はないはずだった。それなのに、自分は相手が強敵であるかのように思考を集中させていた!? あり得ない!!
「そう、公子に脅威など考える必要はないはずだ。大体、友好国の祝賀使節団だろう? そもそも敵対者になりようもない」
いやまさか……公子は裏では我が国を転覆させようと企んでいるのか? そのように見えたから自分は公子の一挙手一投足を眺めていたのだろうか……そうなのかも……私のカンは鋭い気付いていないだけで説明できないだけで、不審なところが公子にあるのかも……?
ヒルリアは、自分の異様な行動にそう結論づけると一つ頷いた。
「よし! これからあの公子の真の目的を探ろう!!」
幸い、自分は接待役だ。親しく接していれば腹も探りやすいだろう!! そうだそうしよう!
両手をギュッと握って決意すると、ヒルリアはベッドに戻った。そして、目を瞑るが……。
「なんなんだ、一体!!」
瞼の裏に浮かぶのは、ノビリスの微笑んだ顔だった。
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