あと三回まで・地味な攻撃と衝撃

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あと三回まで・地味な攻撃と衝撃

「姫様。帝国美術館を案内していただき感謝します。姫様の絵は飾られていないのですか?」 「姫様。遠乗りも楽しいですね。馬に乗る姫様は神話の女神・アテナそのものですし」 「姫様。姫様はどんな宝石がお好きですか? 今度プレゼントさせてください」 「姫様!」 「姫様?」 「姫様……」  ヒルリアは謎の攻撃をノビリスから喰らい続けていた。 「現皇室の絵画は王宮の専門棟に飾られている。美術館に入れるのは帝国では縁起が悪いから」 「公子が馬に乗れるとは意外だな。招待すべきか迷っていたのだが」 「人からは真紅のルビーが似合うとよく言われる。そのせいかルビーばかり溜まってしまって」  などなどなど……反撃はするのだが。  頑張った反撃にも、公子の笑顔は全く揺るがなかった。  そして、その笑顔をがヒルリアの動悸を早くするのも。ふとした瞬間にその笑顔が浮かぶのも。 「全くーーーっ!! 一体なんなのだ!! あの公子は!!」  ヒルリアがそう叫んだのは、その日で八回目だった。何もしないでいるとすぐにノビリスの笑顔が浮かんでくる。ここ数日は睡眠時間にもその微笑みは侵食してきて、ヒルリアは多少睡眠不足気味だった。これはいかんと酒の力を借りるのも……何度目だ? 「あの公子にあと二回も会わないとならないだと!!」  だが、そう言ってしまってから、ヒルリアは自分の言葉に心臓がちくりと痛んだのを感じた。なんの痛みだ? 疑問に思いながら、ワイングラスに手を伸ばす。  と、くすくすと笑い声が聞こえてきた。 「何がおかしいのだ?」  幼い時から一緒に育った腹心の侍女が笑っている。 「いえ。言っていいかどうかずっと迷っていたのですが」 「なんだ? 何か気づいたとでも?」 「いいんですか?」  侍女は人の悪い笑顔を浮かべた。 「言ってみろよ」  ヒルリアはその顔にイラッとしながら促す。侍女はニヤリと笑って爆弾をぶつけてきた。 「姫様。オレアン公子に恋されてますね!」
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