3人が本棚に入れています
本棚に追加
あと三回まで・地味な攻撃と衝撃
「姫様。帝国美術館を案内していただき感謝します。姫様の絵は飾られていないのですか?」
「姫様。遠乗りも楽しいですね。馬に乗る姫様は神話の女神・アテナそのものですし」
「姫様。姫様はどんな宝石がお好きですか? 今度プレゼントさせてください」
「姫様!」
「姫様?」
「姫様……」
ヒルリアは謎の攻撃をノビリスから喰らい続けていた。
「現皇室の絵画は王宮の専門棟に飾られている。美術館に入れるのは帝国では縁起が悪いから」
「公子が馬に乗れるとは意外だな。招待すべきか迷っていたのだが」
「人からは真紅のルビーが似合うとよく言われる。そのせいかルビーばかり溜まってしまって」
などなどなど……反撃はするのだが。
頑張った反撃にも、公子の笑顔は全く揺るがなかった。
そして、その笑顔をがヒルリアの動悸を早くするのも。ふとした瞬間にその笑顔が浮かぶのも。
「全くーーーっ!! 一体なんなのだ!! あの公子は!!」
ヒルリアがそう叫んだのは、その日で八回目だった。何もしないでいるとすぐにノビリスの笑顔が浮かんでくる。ここ数日は睡眠時間にもその微笑みは侵食してきて、ヒルリアは多少睡眠不足気味だった。これはいかんと酒の力を借りるのも……何度目だ?
「あの公子にあと二回も会わないとならないだと!!」
だが、そう言ってしまってから、ヒルリアは自分の言葉に心臓がちくりと痛んだのを感じた。なんの痛みだ? 疑問に思いながら、ワイングラスに手を伸ばす。
と、くすくすと笑い声が聞こえてきた。
「何がおかしいのだ?」
幼い時から一緒に育った腹心の侍女が笑っている。
「いえ。言っていいかどうかずっと迷っていたのですが」
「なんだ? 何か気づいたとでも?」
「いいんですか?」
侍女は人の悪い笑顔を浮かべた。
「言ってみろよ」
ヒルリアはその顔にイラッとしながら促す。侍女はニヤリと笑って爆弾をぶつけてきた。
「姫様。オレアン公子に恋されてますね!」
最初のコメントを投稿しよう!