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あと二回・お茶会
「姫様。このお茶会も大盛況ですね」
祝賀行事の一つのティーパーティー。ノビリスはいつものように美しい笑顔で、ヒルリアの前に現れた。
「あ、ああ。」
ヒルリアは昨晩の会話のせいで、公子の顔を正面から見れなかった。
「姫様?」
不自然に視線を逸らすヒルリアの視界に入ろうと、ノビリスはあっちこっち動くが。
「すまない、兄上と話があるんだ」
ヒルリアはそう言い捨てて、さっとその場を離れた。その時、公子がどんな表情をしているか、確かめもせず。
なんなんだ! なんなんだ!! 私が公子に恋してる?? そんなはずない!! だって相手は十三も年下の子供だぞ!? それは……笑顔は魅力的だし、声だっていい。身のこなしだって、子供とは思えない……。
……ちがーう!! 違う違う違う違う!!
でも、この動悸。相手の事ばかり考える思考。大昔に読んだ子供向き恋愛小説に書いてあった通りだ。じゃあ本当に?? 本当に、私は公子に××してる?? そんなはずない!!
「どこへ行く気だヒルリア。そっちは会場から離れる道だぞ?」
「あ。兄上……」
「顔色が悪いな、英雄姫。どうかしたのか?」
「な。なんでもありません……」
兄に恋愛相談など絶対にできなかった。この兄に、そんな繊細な物事を考える頭があるとは期待できない。では、誰に相談すべきか? いや、その前に相談する物事なのか?
皇室の結婚は全て政略の元に行われる。この心が恋心だとして、それを明らかにしてなんの利益が?
黙っておこう。誰にも話さず自分も黙殺しておこう。それが、いいはずだった。
だが。
「あれを見て。オレアン公子とゲオルグ令嬢よ」
「従兄妹同士とはいえ、仲がよろしいわね」
「オレアン公子は結婚相手を探しにきたって噂だけど、もう決まったようね」
パーティー会場の話が聞こえてきて、その瞬間、ヒルリアの心は悲鳴をあげた。
「兄上。私の結婚相手はもう検討済みですか?」
思わず口走った言葉が、まごうことなく本心だと、ヒルリアも認めざるおえなかった。
だが、それでも、どうするんだ?
ノビリス公子と私的に話せるのはあと一回目、あと一回目だ。最終日の大宴会の場しかない。そこでどうするんだ私は? まさか、プロポーズでもするのか? 恥も外聞も何もかもかなぐり捨てて?
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