引き揚げ船で帰国とその後

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韓国に着いた時はホッとしたが、引き揚げ船は釜山から出るようで、私と息子は、その引き揚げ船に乗る大勢の人達と釜山に向かう。 私は息子がいるから、気を引き締めることができたけど、38度線を越えたことで、緊張の糸が切れてしまい、そこで亡くなる人もいた。 安心しすぎかもしれないけど、もう少しで日本だったのに、本当に痛ましい。 それでも進むしかなかった。 釜山の港にはたくさんの人がいたけど、私と息子も船に乗ることができた。 中はたくさんの人がいたけど、私達は狭いスペースでも気にならなかった。 とにかくホッとした。 船は長崎の佐世保に向かっていた。 やっと日本に着くんだ…。 「内地帰ったら、ご飯食べれると?」 「うん、食べれるよ」 骨と皮ばかりで、目がギョロギョロとしている我が子を抱きしめて、私は頷いた。 だけど、船内で息子が発熱してしまい、相当に具合が悪いので、船にいる船医に診せることにした。 「うーん、発熱なら風邪では?」 「そうですか…」 私は風邪じゃなくて、麻疹ではないかと思った。 弟妹達がかかった時と似ている。 私は息子を抱きしめて温めると、身体に赤い発疹が出て、やはり麻疹だった。 医者が誤診するなんて…若い人だから、よく分からなかったのかな?
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