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再度診せることになったけど、船医は私を褒めたけど、誤診するな!
「お母さんの勝ちですね。もう大丈夫」
とにかく麻疹は確実だったので、その発疹が引くまで、熱が引くまで祈るような気持ちだった。
実はこの時はもう船は佐世保に着いていたのだけど、何故か二週間も船から降りられなかった。
息子をおんぶして、岸まで泳いでやろうかと思ったけど、それは現実的じゃないと思えて、おとなしく下船許可を待つことにした時に、息子が麻疹にかかったのだ。
下船許可が出る直前で、息子は熱が引いて、麻疹から回復した。
苦しかったろうに、よく頑張ったね。
そしてやっと下船。
ここで気付いた…私は服はあちこち破けて、足は裸足だった。
あまり気にしていなかったけど、何となく痩せた感じもした。
私より息子の方が痩せていて、栄養をたくさん摂らせてあげたかった。
こんなに痩せた乳児は見たことなかった。
船を降りて、足を付けた地面は日本の地面。
それだけで嬉しかった。
私は息子を連れて日本に帰って来たんだと実感する。
「美千恵!」
私を呼ぶ声の方を向くと、何と父が迎えに来てくれていた!
「お父さん!」
「よかった…無事でよかった!こんなに痩せて…。そのおぶっている子が和寿だな?」
「はい、お父さんの孫よ…」
私は父に会えた安堵感から、涙が止まらず泣きながら答えた。
今までは息子を守ることで気が張って泣くことなんてできなかった。
でも、今だけは泣かせて。
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