蓼食う君が好き好き

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 様々な角度からダンゴムシを撮影する相澤さんにつられて、僕も二枚写真を撮った。ダンゴムシ単体で一枚と、相澤さんが満面の笑みで撮影している姿を一枚。 「私は今日、ダンゴムシとして山を登ります!」 「すっごい独特な決意表明だね……」  ダンゴムシとの束の間の撮影会を終え、山を登り始めた。昨日まで降り続いていた雨の痕跡が、湿った土の色味と独特な匂いから分かる。右側を見ると連なった他の山々があって、(まば)らに鉄塔が立っていた。  僕は左手に持っている沢山のジュースの入った袋を握りしめながら、純粋に風景と登山を楽しんでいた。昔から父に連れられて日本百名山を一つずつ登頂していた身としては、この山は決して難易度の高い物ではない。それでも、高所から見える非日常の風景は山ごとにその彩りを変える。そのそれぞれの味わいが優劣無く僕は大好きだ。 「山ってっていう安心感があるんだよね。学校や塾で嫌な事があっても、変わらずどっしりと構えてる山々を見ると、僕もあんな風に悠然と生きていきたいなって思うんだ」 「安心感ですか。私にとっては新しい視点ですね」  相澤さんはふむふむと頷くと、胸ポケットからメモ帳を取り出して何かを書き連ねていた。恐らく僕が言った事をメモしているのだろう。こうやって色々な事を貪欲に学んでいく姿勢は、僕も見習っていくべきかもしれない。  道中では容赦なく日光が降り注いだ。夏の暑さを考慮して朝九時に集合を予定していたのだが、部員達を待っていた都合で、今はもう昼前になっていた。汗をかけば水分は当然失われる。喉が渇く前に水分を摂取するのが一番望ましいので、適度に休憩を挟み、その度に一緒にジュースを飲んだ。 「このメロンソーダ、ちょっと嫌いかもです」 「それならこっちの紅茶はどうかな?」 「ありがとうございます。……この味、結構好きです」
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