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「でも、先輩には彼女いるし、失恋だし、もう、別に見れるだけでいいし……」
考えると、どんどん落ち込んでいってしまうあたしは、最後にため息を吐き出した。
「加納先輩ー、昨日スーパーで見かけたんですけど、一緒にいたのって彼女ですかー?」
畠山くんの質問に、辺りはザワザワとし始める。加納先輩はモテるけど、彼女はいないって噂だったから当たり前の反応だ。
と、言うか、わざわざそんなこと聞かなくていいのに、何聞いてんだ、畠山くん!!
「え? あー、あれ妹」
きょとんとした顔で答えた先輩に、畠山くんがあたしに「だって」と笑う。
「よし、これでフェアだろ? 加納先輩より俺の方が良いって思わせるから、だから、あと一回チャンスちょうだいね、大森」
やけに自信満々で畠山くんはあたしに微笑むと、ようやくやってきたバド部の男子達とさっそく練習を開始する。
「お疲れ歩乃〜っ、愛の特訓はどうなった?」
「は!? 愛!?」
畠山くんは真面目でかっこいいってイメージが、なんだかひっくり返った。彼は色々強引だ。
あたしはこのまま加納先輩を好きでいるんだから。あたしだって、あと一回加納先輩と目があったら告白する!
畠山くんのおかげでやる気に火がついた。
あたしはラケットを取り出して、これまで以上の声を出して部活に取り組む。
そして、これから始まる恋の攻防戦は、きっと、近くて遠いあと一回。
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