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「大森って早く来る割に練習はそこまで気合い入ってなくね?」
「……え」
「試合のメンバーにも入ってないじゃん? 頑張ってんのになんか悔しいよな、それ」
「……あ、いや」
肩にかけていたラケットバックを壁に立てかけて、畠山くんはその場で駆け足をして準備運動をし始めている。
彼は高校からバドミントンを始めたと聞いた気がする。だけど、持ち前の運動神経の良さでバド部男子の中でも上手い方だ。
先輩達に比べたらまだまだ敵わないようだけど、いつも練習を頑張っているイメージがある。
あたしの不純な一番乗りとは全く違う、正真正銘の努力家だ。
だから、〝加納先輩の姿を見たくて一番乗りしている〟なんて、言えるわけがない。
「俺、教えようか?」
「え!?」
思わぬ言葉に、あたしは俯いていた顔をあげた。
ニカッと笑う畠山くんが、キラキラ輝いて見える。バスケをして楽しそうに笑う加納先輩のオーラに似ている気がして、一瞬ドキッとした。
「そうしよっ! 夏休み終わったら新人戦あるし、それに出れるように一緒に頑張ろうぜ!」
「……う、うん」
思わず、畠山くんの勢いに押されて頷いてしまった。部活開始時刻になったからか、続々と他の部員が体育館内に入って来る。
「明日からな、秘密の特訓!」
小声で言って笑うと、畠山くんは男子メンバーの輪の中に走って行ってしまった。
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