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次の日、あたしはいつものように早めに家を出た。バスケ部が終わる時間よりも早めに体育館に向かう。床を打つボールの音が徐々に耳に響いて来る。開けっぱなしの入り口から、中を覗くと、ちょうど加納先輩がスリーポイント地点からシュートをはなった。
風が吹き抜けていく。
やっぱり、かっこいい。
「かーっこいいよなぁ」
いつの間にか、隣にいた畠山くんがポツリと呟くのに気がついて、あたしは驚きながらももう一度先輩に視線を戻して頷いた。
「うん」
「大森って、加納先輩のこと好きなの?」
ストレートに聞かれて、顔に熱が上がってしまう。
「好き……って言うか、憧れって言うか……」
「ふぅん」
腕を組んで、畠山くんはジッと加納先輩を睨むように見ている。
そんなに見ていたら、こっちに気が付かれちゃうよ。やめてほしい。そわそわしていると、後ろから加納先輩の声が聞こえて来るから、慌てて振り返った。
「おう、一久! 元気ー?」
「元気っす」
「もう終わるからもうちょい待っててな」
親しげに畠山くんに話しかけている加納先輩に驚く。そして、ラケットバックを置いて先輩の前に走って行った畠山くん。なにやら話をしている。と、思えば、こちらに振り返ってあたしに手を振っている。
あたしに、だよね?
自信がなくて辺りを見回してから、やっぱりあたしにだと確信する。
「俺もスリーポイント打つから見てて」
「……え?」
畠山くんが加納先輩からバスケットボールを受け取ると、慣れたように片手でドリブルを始める。そして、腰を低くした後に走り出し、スリーポイントラインに辿り着くと、そのままの勢いでシュートを放った。
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