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剣先に迷いがある―― 八木に言われた。 顧問の八木の指導は抽象的がすぎる。何が悪いのかがわからなくて、いつも深く考えさせられてしまう。 考えることは悪いことじゃない。だから考えればいい。きっとたくさん考えていられるときは今しかないのだろうから。 「ありがとうございました」 取り敢えずは礼をする。そして今日の部活を終えた。 更衣室で一息ついて、面や胴といった防具一式を外す。胴着を脱いで折り畳む。 映画やドラマなんかでは頻繁に面を外したりするけれど、実際にはいったん稽古が始まったら、その日のすべての稽古が終わるまで面を外したりなんかしない。 滝のように流れ落ちる汗が顔全体を容赦なく濡らす。夏場は地獄だ。 今日は変な日だ。どういうわけか、女子部員全員がサボって休んだせいで、私の他は男子部員しかいなかった。 自然、ひとりで帰る羽目になった。 校門を抜けたら、どういうわけか左の太ももの尻の付け根の辺りがかゆくなった。 いったん立ち止まって制服のスカートの中に手を入れてボリボリとかきむしっていたら、ちょっと腫れてきた。どうやら知らぬ間に蚊にさされてしまったらしい。
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