7/7
前へ
/11ページ
次へ
自宅にたどり着くと、すぐに携帯電話がメッセージ受信の音を鳴らした。サトセンからだ。 ――帰るなら帰るで起こしてくれ―― どう返信したのか、私はぜんぜんおぼえていない。 サトセンに私は相応しくない。絶対に。サトセンのことは大好きだ。でも好きなだけじゃ駄目なんだと思う。サトセンは心が綺麗な人だ。私はそうじゃない。私は穢れている。私はサトセンには相応しくない。私には今日それがわかった。 さようなら、サトセン。あなたにはこれまで通り剣道部のその他大勢の後輩のひとりとして接してゆきます。だから私のことを特別な存在だとは夢にも思わないでください。 中一のとき、両親が離婚した。私は母親に引き取られた。三人兄妹。兄と姉とは引き離された。寂しかった。寂しくて寂しくてたまらなかった。だからというわけじゃないけれど、中一から中二にかけての数ヶ月間、SNSで知り合った大人たちを取っ替え引っ替えして自分で自分をいじめ抜いた時期が私には確かにあった。 誰にも話していない。誰も知らない。でも私は私が穢れていることを知っている。私は私自身を騙すことが出来ない。私は穢れている。だから私はサトセンが思っているような私じゃない。私にはサトセンと付き合う資格がない。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加