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「で?」
「ん?」
「買い物して、そのあとは? 変な事されてないよね?」
翌日の日曜日、昼過ぎに自宅へ親友の蒔田 志歩と坂峯 弥生が遊びに来て、手土産に持って来てくれたケーキでお茶をしながら昨日の出来事を話した。
怪訝そうな表情で訊く志歩。デザート用のフォークをケーキに突き立て、ひとくち分をすくうように取って口に入れ、あっけらかんと答える。
「予定の2時間で別れて、帰って来たよ」
「はあぁぁ……」
大きなため息をつき、志歩は心配そうに続ける。
「どうして相談してくれなかったの? 朱里が好きだった人に振られて、傷ついてるのは知ってるし、寂しいならそばにいるよ。気晴らししたいなら買い物だって付き合うのに…」
「志歩!」
思いつめたように詰め寄る志歩を、弥生が制す。
「だって!」
「うん。心配だよね。分かるよ。でも朱里も子供じゃないよ」
弥生が志歩を宥める。
「ごめん……志歩と弥生に相談なく、勝手な事して…」
フォークを置いて、心配してくれる2人に頭を下げて謝る。
本気で心配してくれる志歩、心配しながらも理解してくれる弥生。2人とは高校1年の時に同じクラスになり、すぐに仲良くなって親友になった。2、3年でクラスが分かれても、大学が別々になっても親友のままだ。
志歩はスラリと背が高くモデルのような体型でボーイッシュ。綺麗な顔をしていて、髪はえりあしが短く耳を出してる黒髪ショートボブ。服装は主にパンツスタイルでスカートやワンピースは着ない。
弥生は私と同じくらいの身長で163cm。可愛い顔をしていて、ふんわりカールで栗色肩ラインボブ。服装はスカートやワンピースが多く、可愛らしいものが多い。
ちなみに私は、至って普通。顔は自分で言うのもなんだが、ブサイクではないと思う。たぶん。髪は胸までの黒髪セミロング。カーラーでゆるく縦巻きのカールを入れている。
私にとって志歩は心配症のお父さん、弥生は柔軟で理解力のあるお母さんという感じ。いつも私の事を真剣に心配し、時に怒り、慰め、癒してくれるかけがえのない親友だ。
「本当に何もされてない?」
もう一度、志歩が確認する。
「うん。何もされてない」
そう答えると、安心したように笑顔を見せ「よかった」と言って、志歩はコーヒーを飲んだ。落ち着いた志歩を見て、弥生が微笑んで尋ねる。
「どうしてまた、その、レンタルカレシ? っていうのに依頼したの?」
弥生の質問に同調するように、ジロッと鋭い目つきで志歩が見てくる。
「それは…」
言い淀んでいると、弥生が鞄から携帯を取り出しさらに訊いて来た。
「朱里、レンタルカレシ、何だっけ?」
「あぁ、ラバーズ…」
「レンタルカレシ、ラバーズ…っと…」
弥生が携帯にそう打ち込み、検索をかける。
「あっ、出た!」
とっさに志歩が弥生の携帯を覗き込む。弥生が訊く。
「どの人?」
「人気ナンバー3の、REIっていう人…」
そう答えると、弥生と志歩は携帯の画面に注目し、キャストのREIを確認する。
「へぇ……カッコいいね! 朱里の好みのタイプ、ど真ん中じゃん!」
弥生がニヤニヤ笑いながら言うと、志歩は鼻で笑いながら口を尖らせて言う。
「こんな仕事してるくらいだから、ろくな奴じゃないよ。遊んでるに決まってる…」
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