まさかの再会

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まさかの再会

4月、新学期。始業式の日。 生徒達が登校して来る前に、新しく来た教師の紹介が職員室である為、早めに家を出る。 白の襟付きシャツにベージュのパンツスーツ、ベージュのパンプスを履いて大きめの黒の鞄。ナチュラルメイクで髪は縦巻きカールで軽さを出し、両サイドの束を軽くねじって後ろで留める。小さなピアスと華奢な腕時計をつけて、落ち着いた印象を重視したスタイルで向かう。 電車で20分、下車駅から徒歩7分の距離を緊張しながら歩き、校門の前で一旦立ち止まり深呼吸をする。 (やっとだ……やっとここまで来た。ずっと目指していた先生に…) 「よしっ! 行こう!」 緊張しながらも気合を入れ、教師の道へ一歩踏み出す。 大きな校舎を見ながら職員の出入り口へ進み、靴を脱いで上履きとして持って来た靴に履き替える。靴は靴箱に入れておき、そこから真っ直ぐ職員室へ向かう。 職員室と書かれたプレートが掲げられている方のドアの前に立ち、ノックすると中から教頭が出て来た。 「おはようございます」 挨拶をして頭を下げ、頭を上げると優しく微笑んで教頭が返す。 「おはようございます。いよいよですね。緊張していますか?」 「はい、少し…」 「大丈夫ですよ。教師を目指して頑張って来た事を忘れず、日々精進して下さい。くじけそうになった時は初心を思い出し、あなたが目指した道を進んで下さい」 「はいっ!」 「では、中へどうぞ。森下」 教頭の『先生』という言葉に胸がぎゅっと締めつけられ、嬉しさや喜びが沸き上がる一方で、身の引き締まる思いがし、浮かれる気持ちを引き締めた。 「失礼します」 そう言って職員室の中に入り、教頭が立っているデスクの前に進む。この春、赴任されて来た教師が1人立っており、私はその横に並ぶ。 「えぇ、ではこの春、我が校に赴任、新任されて来た先生方を紹介します」 背後から教頭がそう話し始め、私は現在従事している教師達の方へ向く。 中央をあけて左右に教師達のデスクが並び、皆、座ってこちらに注目している。デスクは向かい合って並べ、教師達が顔を見合うように配置されていた。その左側の一番奥のデスクに座る教師に目が留まる。 赴任して来た教師が挨拶をしている中、私は息をのみジッと一点を見つめたま呼吸をする事すら忘れていた。 (なぜ、ここに……どうして…) 「……先生、森下先生」 教頭の呼ぶ声にハッと我に返り、慌てて返事をした。 「は、はい! 森下 朱里と申します。英語を担当します。ご指導、よろしくお願いします!」 勢いよく頭を下げて礼をすると、教師達から拍手が沸いた。顔を上げ先ほどの教師に視線を向けると、満面の笑みでこっちを見ていた。 自己紹介が終わると、教頭が使うデスクの場所を指示し、私は左側奥のデスク、先ほどの教師の向かい側になった。それぞれデスクに向かい、周りの教師に声をかけ席に着く。 すぐに教頭から始業式進行の説明が始まる。体育館に全校生徒を集め、校長や教頭の挨拶、赴任、新任した教師の紹介などがあるという。真剣に話を聞きながら、私は内心ドキドキ緊張していた。 教頭の話が終わると、クラス担任になっている教師はそれぞれ教室に向かう。各学年5クラスあり、残った教師は職員室で待機だ。
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