まさかの再会

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「ふふっ、久しぶりだな。森下!」 「ほんとに……びっくりしました。矢吹先輩!」 大学3年の時に告白して振られ、それ以来、顔を合わせる事がないまま卒業していった矢吹先輩。どこの学校に教師として採用されたのか知らなかったが、まさか新任先の『誠立高等学校』で再会するとは思いもしなかった。 「俺もだよ! 教師になったんだな」 「はい!」 「これからよろしくな!」 「はい。こちらこそ、よろしくお願いします!」 矢吹先輩にお辞儀をして改めて挨拶をした。 矢吹先輩には振られてしまったけれど、気まずさより再会出来た喜びの方が大きく、これから同じ学校で教師として関わっていける事が嬉しかった。 約2年会っていない間に、矢吹先輩は男らしく落ち着いた雰囲気で頼もしく見える。 (カッコよさが増してるよぉ……) 「あ、そろそろ体育館に移動しないと」 矢吹先輩が立ち上がり、私も立ち上がって一緒に職員室を出る。職員室から体育館へ向かい、矢吹先輩の横に並んで歩く。 「分からない事があったら何でも訊いてくれ。出来るだけフォローするから」 「はい、ありがとうございます」 そう笑顔で返した後、矢吹先輩が微笑んで言った。 「もう一度会えてよかった…」 「えっ…」 「会いたいと思っていたんだ。森下に……あの時は…その……ごめんな…」 申し訳なさそうに謝る矢吹先輩。 「い、いえ……忙しくなるのは分かっていて、私こそすみませんでした…」 そう笑顔で返すと、矢吹先輩は真剣な顔でこう言った。 「あの時は、森下の気持ちに応える事が出来なかった。でも今なら、応えられる。応えたいんだ。森下、まだ俺の事、好きでいてくれてる?」 「えっ…」 思ってもいなかった事を言われ、驚きで足を止め、思考も止まる。どう返事をすればいいのか分からない。告白して振られて、この恋は終わったはずなのに、気持ちにケリをつけたはずなのに、胸の中のどこかでドキンと高揚してる。 それを答えとして出していいのか、今の自分の気持ちはどうなのか分からずにいた。 「いや、今すぐ返事が欲しいとは思っていない。でももし、まだ俺に気持ちが残っているなら、俺と付き合ってくれないか? 返事は待つよ。考えて欲しい…」 立ち止まって、矢吹先輩は真剣な目で私を見つめ言った。 「はい…」 そう答える事しか出来ない私に、矢吹先輩は笑顔で言う。 「ほら、急がないと始業式が始まる。急ごう!」 「はい!」 少し駆け足で体育館へ向かう。その間も、隣で爽やかに駆け足で体育館に向かっている矢吹先輩をチラリと見て、ドキドキする気持ちを抑えながらグルグルと考えていた。 (私の気持ちは……嬉しい…けど、新任して恋愛なんてしてられるのかな……そんな余裕あるのかな……嬉しいけど……この気持ちって、先輩の事、まだ好きって事…?) 考えれば考えるほど、自分の気持ちや立場、今何が重要な事か分からなくなってくる。 (あぁ……今はそれどころじゃないや……全校生徒の前で話す事……それを考えなきゃ…)
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