まさかの再会

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体育館に着くと、中央に生徒達が集まり、各学年クラスごとに二列に並んでいた。生徒達の左側へ進み、急いで教頭の元へ向かう。壇上へ上がる階段のすぐ近くに校長と教頭が立っており、赴任して来た山崎(やまざき)先生と一緒に教頭の隣に並んだ。そのあとに続いて他の教師達が並ぶ。 校長が階段を上り、壇上の中央にあるテーブルへ向かうと、生徒達は静まり体育館内はシンと静かになった。校長がマイクに近づき話し始める。 新入生への挨拶をし少し話をした後、会釈をして降壇した。校長と入れ替わりで教頭が私と山崎先生に声をかけ、壇上に上がる。 教頭が中央のテーブルからマイクを外して取り、テーブルの前に私達を並ばせ生徒達に紹介を始める。 「この春から我が校に来られた先生を紹介します。数学を担当される山崎先生と英語を担当される森下先生です。では軽く自己紹介をお願いします」 教頭から山崎先生へマイクを渡され、堂々と自己紹介を始めた。 山崎先生は別の高等学校からの赴任で、教師歴は7年だという。職員室での自己紹介を聞き逃した為、どこの高等学校から来たのか分からないが、大勢の生徒の前でも動じず堂々と話していた。 山崎先生が自己紹介を終え、生徒達から拍手を受けながらマイクを差し出す。私は会釈してマイクを受け取り、ドキドキ緊張しながらマイクのスイッチを入れ、全校生徒に向かって挨拶を始めた。 「英語を担当する森下 朱里です。教師になったばかりで分からない事も多く、頼りなく思われるかも知れませんが、皆さんと一緒に成長していきたいと思っています。よろしくお願いします」 ゆっくりとお辞儀をすると、どこからか声がした。 「じゃ、なんか英語で話してよ!」 どこからかは分からない。男子の声で意地悪で茶化すような言い方。 誰かは分からないが、英語には自信がある。真っ直ぐ生徒達に向けて、先ほど自己紹介した内容を英語で話す。 「My name is Syuri Morishita, and I teach English. I’ve just become a teacher, so I don’t know much, and I may seem unreliable, but I want to grow together with you all.」 言い終わるとシーンと静まり、生徒達がジッと私に注目していた。 (高校生でしょ? これくらいなら…) パチ、パチ、パチ。 ポツポツと拍手が起き、それは徐々に増え、ワッと歓声が上がり大きな拍手となった。 「はぁっ……ちょっと緊張した…」 英語教師としての名目(めいもく)が守れたようで安心し、マイクを教頭に返して、私と山崎先生は降壇した。 階段を降り教師達の列に戻ると、教師達からこっそり拍手をもらう。 「何かすみません…」 「いいのいいの。きっちり証明出来たね」 教師達がそう言ってくれてホッとした。 始業式が終わり、職員室に戻って明日から始まる授業の時間割をもらい確認する。 私が担当する英語の授業は、2年生と3年生で週15コマ。教科書も使うが、英会話が主な授業になる。文法など試験用の授業は別の教師が担当し、私は英会話能力が高い事で採用され、新任にも関わらず3年生も担当する事になったのだ。 TOEIC(トーイック)のスコアは948点。英検1級の資格を持っている。親友の志歩と弥生をつれて、頻繁に海外へ旅行に行ったりして、英会話力を身に着けた。それが功を奏して、採用試験はあっさり受かったのだ。
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