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26歳の環奈
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財閥御曹司?
私にとってそれは、人の不幸を冷笑する最低最悪な生き者だ。
◇◇◇◇◇
私、花村環奈26歳。
ジャパンエアウェイズ入社4年目の客室乗務員。
いつも通り身だしなみを整え、羽田発ロンドン行きに備える。
「ごきげんよう、環奈」
ショーアップ(集合時間)直前、背後からやって来た同期の美紗都が私の顔を覗き込む。
「ごきげんよう、美紗都」
「あれ? 環奈、リップ変えた?」
「変えたっていうか、試供品を使ってみたの。美紗都、鋭い」
「私だけじゃないわ。みんな環奈のこと凄く見てる。私服姿なんか特に」
「え…… それはちょっと気が引けるかも。美紗都も知っての通り、私が身につけてる物って、全くブランド品でもないし、お店で見つけたお買い得な物ばかりよ。セール品もあるし、しかも数年前に買った物もある」
「それがいいのよ。高ぶらないところが環奈だから。それに、なんてったって、CAカレンダーのモデルよ」
「それね、撮影、凄く恥ずかしかった」
「予約部数、去年を上回る勢いだって聞いたわよ」
「そうなの? 私、そこら辺はよくわからないけど、そういうこと聞くとやっぱり嬉しいな」
「……あのね、環奈」
美紗都から笑みが消え、神妙な面持ちで私を見つめた。
「ん?」
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