2人が本棚に入れています
本棚に追加
今も、目を瞑るとママとバニラの姿が鮮明に蘇る。
少し天然で、滅多なことでは怒らない優しいママ。
雷とか大きい音が苦手で、怯えるとすぐに寄り添ってくる甘えん坊のヨークシャテリア、バニラ。
確率的、寿命的に考えると、私は動物より長生きするだろうし、ママよりも死ぬのが遅いだろうと分かっていた。
一生の別れがくることは、子供ではないから理解できていた。
理解していたけれど、その別れはあまりにも唐突で、残酷に訪れた。
「いつまで塞ぎこんでるの、彩姉?」
私と一緒に事故の瞬間を目撃した、二つ下の妹、由紀が落ち込む私に声をかける。
「ごめん、お姉ちゃんである私がしっかりしないといけないのに、こんなんじゃ駄目だね」
「駄目だとは思わないけど、良いとも思わない」
私を責めたり励ましたりするのではなく、ただ自分の意見を述べただけといった感じで由紀が返す。
「強いな、由紀は」
「負けず嫌いなだけだよ」
「今回の場合、負けず嫌いは関係ないでしょ」
最初のコメントを投稿しよう!