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「仕方ない」
そんな由紀に、魔法使いが今までで一番優しい声で話しかける。
「二人仲良く、死になさい」
私の体が、由紀のすぐ隣、車の前に移動させられる。
「それではお二人、良い目覚めを」
◇
それは、一瞬の出来事だった。
考えるよりも早く、私は横にいる由紀を抱きかかえ、迫り来る車のボンネットに背中を乗せるようにジャンプする。
本能的に、轢かれたら助からないと察知したのだろう、私の体は柔道の試合で相手が技をかけてきた時に投げられまいと反応するように素早く反応し、ボンネットの上を転がりその勢いのまま身体を回転させ、車を飛び越えた。
客観的に見ると私は派手に撥ねられたように見えるが、車にぶつかった衝撃は驚くほど少なかった。
撥ねられたよりも、その後、地面に叩きつけられた痛みと、その際に出来た擦り傷の方が痛い。
「彩! 由紀!」
聞き慣れていて、それでいて凄く懐かしく感じるママの声が近付いてくる。
あぁ、ママは無事だったんだ。
バニラも、心配そうに私の元に駆け寄ってきてくれている。
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