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 車はブレーキをかけながら大きくハンドルを切ったらしく、ママ達がいた場所の少し手前で、大きく向きを変えて停まっていた。  あの魔法使いは、いったい何者だったのだろう?  結果的に、私達は全員助かったけれど、全員が死んでいた可能性だってある。  私達を助けてくれたのか、苦しめに来たのか分からないけれど、結果だけ見ると私達は助かった。  後日、二人きりの時に由紀に魔法使いはなんだったのか問うと、由紀はこう答えた。 「あの魔法使いは、天使でも悪魔でもなく魔法使いなんだよ。絶対的な善でも、絶対的な悪でもない。だから、私達がどうなるかまでは責任を持っていなかったんじゃないかな。まぁ、絶対的な悪ではないけど、私達が困るような質問をし続けて、挙句の果てに私達が全員死ぬかもしれない選択をしたんだから、性格は悪いと思うけど」 「そうだね」  魔法使いに対しての気持ちをはっきりと表現できない私は、由紀の説明に納得しつつも、すっきりしない気分だった。  そんな私の気持ちを代弁するように、由紀が続ける。 「今度魔法使いに会えたら、私ははっきりと言うよ」  由紀は満面の笑顔を浮かべる。 「ありがとう」  その言葉と裏腹に、由紀の右手は挑発するように中指を立てていた。  了
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