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 今も、目を瞑るとママとバニラの姿が鮮明に蘇る。  少し天然で、滅多なことでは怒らない優しいママ。  雷とか大きい音が苦手で、怯えるとすぐに寄り添ってくる甘えん坊のヨークシャテリア、バニラ。  確率的、寿命的に考えると、私は動物より長生きするだろうし、ママよりも死ぬのが遅いだろうと分かっていた。  一生の別れがくることは、子供ではないから理解できていた。  理解していたけれど、その別れはあまりにも唐突で、残酷に訪れた。 「いつまで塞ぎこんでるの、彩姉?」  私と一緒に事故の瞬間を目撃した、二つ下の妹、由紀が落ち込む私に声をかける。 「ごめん、お姉ちゃんである私がしっかりしないといけないのに、こんなんじゃ駄目だね」 「駄目だとは思わないけど、良いとも思わない」  私を責めたり励ましたりするのではなく、ただ自分の意見を述べただけといった感じで由紀が返す。 「強いな、由紀は」 「負けず嫌いなだけだよ」 「今回の場合、負けず嫌いは関係ないでしょ」
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