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とんだ邪魔が入ってしまったが、気を取り直して再開する。
ヨシタカは、改めて意識を集中した。
ハナニラの可憐な姿が消えて、真っ赤な火柱が現れた。
『ギャアアアア!』
耳をつんざく悲鳴。
制服の女子が、熱さに苦しみ、叫びながらのたうち回っている。
この地に滲みついた、温乃妃子が亡くなる直前に残した強い念による残像だ。
『ギギギギ……』
時間が進んでいくと、今度は歯を食いしばって苦しみに耐えている。
酷すぎて正視に耐えない。
可哀そうではあるが、過去の出来事なので手出しできない。終わるまで見守る。
頭髪、血肉、制服の化繊が燃え上がり、嫌な臭いがヨシタカの鼻を突く。
肉体は、くねくねと奇妙な動きをしながら縮んでいき、やがて燃えカスとなって動かなくなった。悲惨な最期である。
これは、ヨシタカだけに視えているものなので、瑞波は何も知らずに待っている。
(これだけじゃ、他殺を示すものがないなあ)
辛い映像を何度か繰り返してみた。
すると、あることに気付いた。
火が点く直前に、温乃妃子が何か言っている。
(何を言っているんだろう?)
口元がパクパクしているが、声は聞き取れない。
次の瞬間に炎が広がって阿鼻叫喚となる。
(一人なら喋る必要はない。目の前に誰かいるんだ)
何度も繰り返して、口の動きを覚えた。
――あ、ん、う、え、ん、え、い……。
母音だけは分かったが、何を言ったのか判明しない。
(あ、ん、う、え、ん、え、い。目の間にいた人に向かって呼びかけたようだ。火を点けた犯人の名前かもしれない)
霊視を終えた。
「何か視えた?」
「ああ、温乃妃子さんの最期の姿が視えた。焼死だったよ」
「お気の毒に。犯人は視えた?」
「姿は視えなかったけど、誰かがそばにいたのは確かだ」
「そいつが犯人ね。手掛かりはあった?」
「ヒントはあったよ。温乃妃子さんが最後に何かを言っていた。あ、ん、う、え、ん、え、い。誰かの名前だと思う。この母音の並びの人を見つければ、真相が分かるかも」
「母音?」
「ああ、声は聞き取れなかったけど、口の動きだけは読めた。それが、あ、ん、う、え、ん、え、い。僕の名前だと、母音は、い、い、い。白部さんなら、い、あ、え。同じ母音の並びになる人がいないか調べてみよう」
「あ、ん、う、え、ん、え、い……。最後の四文字は、せんせい、じゃない?」
「ああ、先生の母音になるね」
「犯人は教師なのかなあ。やりきれないわね。あとは、上の三文字ね。当時の教員名簿を見せて貰って探してみましょうよ」
「どうせ職員室に呼ばれているから、そこで校長先生に頼んでみよう」
ヨシタカたちは、職員室に向かった。
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