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「では、始めましょうか。何を占いますか?」
「それを当てて貰えますか?」
わざわざ来たのだから、よほど真剣な悩みがあるんだろうとヨシタカは考えていた。瑞波は真面目な顔でいるし、冷やかしのつもりはなさそうだ。おそらく、猜疑心が勝ったのだろう。
「占うことは一つだけになります。本当にそれでいいですか?」
瑞波は、目を丸くした。
「ドリンク一杯で一つだけ?」
「すみません。制限しないと、あれもこれもと際限なくなってキリがないので」
「そ、そうなんだ。そうか……」
今度は考え込んだ。
「ゆっくり決めていただいて結構ですよ。決まりましたら呼んでください」
ヨシタカは、他の仕事を始めた。
時折瑞波に目をやると、「ウーン……、ウーン……」と、目をキョロキョロ、頭をグルグル動かして、何やら唸りながら一生懸命考えている。時間が掛かりそうだ。
数分後、瑞波の動きが止まった。どこか一点を見つめている。
「決まりましたか?」
近くに寄ると、「はい。妹の未来を霊視してください」とヨシタカを見据えて言った。
「妹さんの未来?」
「ええ。出来ますよね?」
「それは出来ません」
「出来ないの?」
「予言者ではないので」
「何でも分かるって聞いたから、ここまで来たのに」
瑞波は、あからさまにガッカリしている。
ちょっと先ぐらいなら現状から予想できるが、未来予知はさすがに無理である。
「おそらく、噂に尾ひれがついたんでしょう。ご期待に沿えず、すみません」
「……」
瑞波は俯いて黙った。
「妹さんに何かあったんですか?」
瑞波が暗い表情で重い口を開く。
「原因不明の病で入院しているの。日に日に弱っていって、このままでは死ぬかもしれないと言われて。一応お医者さんは治療を施してくれているけど、原因が分からないから手探り状態。占いで妹の未来を見て貰えば、今の治療方法があっているかどうか分かるでしょ?」
未来で死んでいたらどうするつもりなのだろうか。
「それより、病気について占ったほうが早いのでは?」
「お医者さんじゃないのに分かるの?」
「とりあえずやってみましょうか。分からなかったら、この分はサービスにします」
瑞波の顔がパッと明るくなった。
「それにする。お願い。妹の病気を占って」
瑞波は、祈るように両手を合わせてヨシタカを見詰めた。
「妹さんの名前と年齢を教えてください」
「白部環奈。高二よ」
「今はどこにいますか?」
「この近くのKO大学病院に入院中」
「では、少しお待ちを」
ヨシタカは、霊視した。
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