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 ヨシタカが通う大学は、とても広くて学食がいくつもある。その中で、一番安あがりと言われている店舗で待ち合わせた。  普段は生協で食パン一斤(安くて一番ボリュームがある)を買って外のベンチで食べるのだが、瑞波と約束したので、滅多にいかない屋内に行って一番安いラーメンを注文した。  ラーメンなのに、なぜかもやしの味噌汁がセットで付いている。  ここでは、カレーライスにも、炒飯にも、焼きそばにも、ステーキにも、もやしの味噌汁が付いてくる。  席で食べていると、瑞波がピザ一切れと水を手にしてやってきた。  さすがに、ピザにはもやしの味噌汁は付いていないようだ。 「お待たせ」  向かい合わせで座る。 「ラーメンが伸びる前に食べてしまうから、ちょっと待ってて」 「どうぞ。午後は休講だから、時間なら充分あるわ」  二人は、黙々と食べて、終わると一息ついて会話した。 「あまり昼休みに見かけないよね。いつもはどこで食べているの?」  瑞波は、常に誰かとおしゃべりに夢中で、ヨシタカが近くを通っても気づいていないようだ。 「適当に外で食べているよ」 「雨の日は?」 「雨の日も。屋根の下のベンチにいる」 「風の日は?」 「強風はさすがにどこかに入る」 「へー」  こんな話が面白いのだろうかとヨシタカは、不思議に感じた。  瑞波は、話題を変えた。 「隣のクラスの尾瀬君って知ってる?」 「いや?」 「あなたのこと、気になっているって」 「ああ、そう……」 「写真見る?」 「いや、いい」  全く興味なさそうなヨシタカに、瑞波はフッと鼻で笑った。 「そういうことには興味なさそうね」 「まあね」 「恋愛対象はどっちなの?」 「特に決めていない」 「あ、そうなんだ。両方ってことね」  完全に誤解されたようなので、ヨシタカは、慌てて否定した。 「そうじゃなくて、恋愛をしないってことだよ」 「それって、どういうこと?」  瑞波には、ヨシタカの言葉を理解できていない。 「それより、本題に入ろう。環奈さんに憑いている霊のことだけど、オンノキコと名乗っていた。何か心当たりはある?」 「オンノキコ? 全然ないなあ」 「その霊が言うには、高校で殺されたらしい」 「高校生なの? それとも、先生?」 「そこまでは確認していない。環奈さんの通っている高校はどこ?」 「都立西南高校だけど、そのオンノキコって人は、そこで死んだってこと?」 「多分。高校内で殺されて、その場に霊としてとどまっていたところに、環奈さんがやってきて憑りついたんだろう」 「じゃあ、殺人事件があったってことじゃない。転入するにあたって、そんな話は聞かなかったけど」 「昔の話かもしれないし、殺人事件として認識されていないのかもしれない」 「昔の話だったら、地方出身の私たちには分からないや。環奈だって、最近こっちに来たばかりだもの。自殺として扱われていたら、誰も話題にしなさそうでお手上げだわ」 「高校名が分かったから、僕の方で調査してみるよ」 「これからも手伝ってくれるの?」 「ああ。乗りかかった舟だし、環奈さんもオンノキコさんも救ってあげたいから」 「ありがとう。助かるわ。私も事件を調べてみる。場合によっては、環奈の保護者として、高校に乗り込んで話を聞くことも出来ると思う」 「それ、いいね。現場に行くことができれば、より詳しくオンノキコのことが分かる。当時の関係者に話が聞ければ、事件解決につながるかもしれない」  二人は、事件解決に向けて協力することにした。
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