私を忘れないで

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「フローラ!」 癖毛のある赤茶の髪に、頬には少しそばかすがあり、不恰好な眼鏡をかけた青年が笑顔で駆け寄ってくる。 彼の名は ジャン・ヘクター 学園の同期生であり、卒業してからも毎日こうして顔を合わせることが多い。 と言うのも、ジャンの勤める研究所への通り道に、私の勤める花屋がある為だ。 朝と夕方には決まってこうして声をかけてくれる。 「おはよう、ジャン。ちゃんと鏡は見た?もう、ほら、ここ寝癖ついてるわよ。ふふ」 私はジャンの髪を、軽く濡らした手で整ええてあげる。 「あっ、また?ごめん、ありがと」 するとジャンはいつも照れて赤くなる。 女性に免疫がないのか、ジャンは私が近づいたり、ちょっと髪に触れるだけで、ものすごく動揺する。 すぐに顔が赤くなって、眼鏡がずり落ちて、そのずり落ちる眼鏡をかけ直そうと慌ててる。 ふふふ。可愛い。  私はジャンの慌てる姿を見るのが面白くて、ついからかってしまう。  特に眼鏡をかけ直す仕草が好き。 片手で鼻の辺りを持ち上げる姿が、私の萌えポイント。 でも、あんまりからかうと怒られるんだけどね。 「あのさ、フローラ…」
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