私を忘れないで

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「フローラ、お前の気持ちも分からないでもない。だから花屋に勤めたいという事も、多目にはみた。 だが、もうお遊びは終わりだ。 いい加減大人になりなさい。 タラントン家の後継者としての自覚を持ちなさい。この家を私の代で終わらせるつもりか? 縁戚から跡継ぎを養子に迎えることも考えたが、私は、出来れば自分の血筋の子供に任せたい。 フローラ、お相手はレイモンド・エルモア殿だ。エルモア伯爵家の次男だ。爵位も同等であり、何より婿養子の話を快諾してくれた。二人でタラントン家を守っていくのだ。いいな?」 私は唇を噛み締めて、ぐっと気持ちを堪えた。 立ち上がると、挨拶もそこそこに部屋へと戻った。 明日? 貴族として、結婚は決められた方とするものだとは分かっていたわ。 分かっていたけれど… 私は無造作にベッドに突っ伏した。 ついにその時がきたのね。 「━━ジャン」 視界が歪み始める 分かっていたこととは言え、気持ちの整理が追いつかない。 「うっうっ」 必死に堪えようとするも、後から後から涙が溢れ出す。 シーツに小さな染みが、出来ていく タラントン家は、男児に恵まれなかった。 その為、私は婿養子を迎える必要がある。 ジャンは平民だ。 伯爵家の婿になど、あの父は認めてくれない。
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