フルーツ農園のセキュリティ

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 Tはちょっとした泥棒だった。観光客向けの店で無愛想に働くかたわら、犯行を重ねてきたが、一向にバレる気配がない。だが、そろそろ足を洗おうかと考えていた。  あと一回。できれば、ラストを飾るのにふさわしいところへ盗みに入りたいものだが。 「でも、そんなところがあるのか?」  Tはネットの情報を眺めながら、頬杖をついた。手練(てだ)れの泥棒と言えば聞こえはいいが、Tが主に盗んできたのは野菜や果物。近場の畑はどこも代わり映えせず、物語の怪盗のような華々しさとは縁がない。  その時ふと、一つの農園が目に留まった。  高級フルーツを育てるその農園は、ちまたで評判のセキュリティ会社と契約していた。会社は急成長していて、予算に合わせた様々なプランを用意していることが人気の秘密のようだ。  調べたところ、農園が加入しているのはプランAとのことだった。高くも安くもない。 「ま、俺の最後の仕事としてはちょうどいいかもな」  Tはニヒルに口角を上げた。  
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