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プロローグ
「あ、ごめん。俺大会出れないかも」
始まりは弊部の部長、野間仁志のひとこと。私達は4名しか居ないこの写真部で、4人でしかエントリー出来ない大会を夏休みに控えている。それなのに。
私、家永瞳の口から出た言葉は勿論こうだ。
「は?」
プレハブみたいな簡素な作りの部室棟の一室で、野間は巨体にポテトチップスというカロリーを袋ごと投下した。
「なんか教務に呼び出されて、今受けてる講義一つでも落としたら留確だってさ。で、アッキーにバレてヤバそう」
うちの部は大学の学業優先だ。顧問になっている秋元准教授が渋々顧問を受けてくれる条件として、留年や学業不振の学生には部活に参加させないという独自ルールを作っていた。
「いや、でもまだ6月よ? 試験とかレポートとかまだ先だし、なんでそんな」
「うちの学部だけの講義があってさ〜。なんか一限ので出席やばい奴あんの。遅刻厳禁のやつ。8:50はまぁ、起きられないしょ?」
「小学校より遅いんだから起きれるでしょ!! だから野間じゃなくて鈍間って呼ばれてるのよ!!」
つい言葉が過激になる。大会に出られないのは私にとって裏切りにも等しい。だってーー。
「まぁまぁ、家永。僕たちで野間を遅刻させないようにすればいいんだから」
間に入ってくれたのは、同じく写真部のボサツだった。本名は別にあるが、懐の広さからか菩薩の異名で呼ばれている。中肉中背、細目の好青年だ。
「僕だって大会に出たい。だから、皆で協力しようよ」
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