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〜反省会〜
【数日後】
部室のテーブルで、私は伏せていた。
(私、自分のことしか考えてなかったーー)
私は先日のことを考えると自己嫌悪に陥る。あの時は人道的に野間が正しかったのだ。結果、野間がお婆さんを運んだお陰で、お婆さんは手早く処置が受けられて、比較的速やかに回復した。熱中症は後遺症もあるので早い処置が肝心なのだ。保健センターの先生方も私達を褒めてくれて、お婆さんからも感謝された。
けれど、あれさえなければ野間が単位を落として、大会に出られないこともなかったのに、という考えがどうしても頭から離れない。
「人助けしてたのにーー」
私は部外者の身分でありながら、工学部の教授に野間のことを伝えに行った。しかし、呆気なく、遅刻は遅刻だからと野間の欠席は覆らなかったのである。
「僕たちにとっては、”たった一回”の欠席だったけど、教授にとってはもう何度目の欠席なんだって話だからね。情状酌量の余地なしと思われたんだよ」
ボサツは、私に生協の食堂でキャンペーンをされていた単位プリンを奢ってくれた。彼なりの労いらしい。
「何度かチャンスがあるように見えても、世の中の信頼は、実際には目減りしていくものが多い。普段から野間が品性方正、出席率100%にしていれば、勝ち得たものがあったかもしれないけど、”あと一回”じゃあなぁ」
私は単位プリンの蓋を開けて、その名の由来である”単位”と書かれたチョコレートのプレートをすくった。大学生が喉から手が出るほどに欲しい単位を、こんな風に簡単に手に入れられたらどんなに良いだろうか。
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