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(私も頑張らないと)
鯉口は立とうとする私の肩を止めた。
「家永はどうして大会に出たい?」
「会いたい人が居るの」
*
地区大学写真部総大会ーー中高の大会とは異なり、いくつかの大学の写真部が旅先で合宿をしながら写真を撮る新しいタイプの写真大会だ。最終日に投票をして得票数の多い写真を撮った大学が優勝となる。行き先は毎年決まっていて、運営協会の会長が所有する北海道の別荘だ。
忘れもしない。去年、私はラベンダー畑で迷子になった。その頃の私は全然写真も撮れなくて、足手まといの部員だった。スマホの充電も切れていたし、広くてどこを歩いても誰もいない。
そんな中、とある麦わら帽子にキャラメル色の長い三つ編みのワンピースを着た女の子に助けられたのだ。
一目惚れだったと思う。
(女なのに、女の子にときめいたなんて変だよね)
彼女は喋れないのか一言も私と話してはくれなかった。私の手を引いて広いラベンダー畑から人の多いところに案内してくれただけ。
それなのに、今まで感じたことのない感情が私の胸をいっぱいにした。
(お礼を言いたい)
けれど、大会の間中、彼女のことを探したけれど、見つからない。
(幻覚だったのかな......)
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