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作戦その一 〜お迎え作戦〜
A.M.8:20
「野間の家、大学から徒歩3分なのに遅刻してたとかあり得ない!!」
「近いからこそ気が緩んでしまうのかもね」
6月後半の蒸した日差しの中で、私はボサツと一緒に野間のアパートのアーチの前に立っていた。地元民の私はバス通学のため、一限がなくても8:00にはこの辺りに着いている。
「そういえば、鯉口は?」
鯉口ーー鯉口瑞希というのは、今年入って来た写真部の4人目のメンバーだ。ゴツい帽子を被った中性的な出で立ちの奴は、無口で気難しい同級生である。
私は奴の吊り目を真似する。
「《野間の問題は野間が解決するべき》ーーだって。悔しいけど、ぐう正だわ」
私達は大学生なのだ。自己責任、年齢相応の振る舞いを求められる。鯉口の言うことは至極真っ当で正しい。
(でも、情がない)
お節介な程に他人に関わりがちな私にとって、鯉口の考え方は相容れない。それに、鯉口は野間と同じ学部なのだ。鯉口が協力してくれれば話は楽なのに。
ボサツと暫く話をしているが、一向に野間は出てこない。
「ねぇ、今8:35なんだけど」
「おかしいね。待ち合わせは8:30にしていた筈なのに」
「もしかして」
「寝てる」
私達は野間の部屋のピンポンを連打した。
「野間ぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
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