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「あれ。あの人、倒れてる」
ボサツが大学の前から少し離れたところにあるご飯屋さんの前にお婆さんが倒れているのを見つけた。私達は慌てて駆け寄る。
「熱中症かもしれない。僕、水あるよ」
「私! 殴って冷えるやつ持ってる!」
「飲めますか?」
ボサツは持っていた水をお婆さんに向けるけれど、お婆さんはグッタリとしている。私はお婆さんの首筋に急冷グッズを押し当てた。
「この辺りだと保健センターが近い。連れて行こう」
「野間は講義に行って、私達でなんとかするから!」
「えっ」
ここで野間に講義を休ませたら、これまでの苦労が水の泡になってしまう。ここは私とボサツでなんとかしなければ。
しかし、野間は首を振った。
「いや、2人だと運べないだろ。俺が運ぶ」
野間は、その大きな巨体でお婆さんを担ぐ。野間の身体にあるのは脂肪だけではなかったのだ! 私達は保健センターまで歩いて行った。
野間はーー結局、講義に遅刻した。
講義開始時間と共にカードリーダーは回収されるらしい。つまり、野間は単位を落としたのだ。
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