子猫と

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 私のいないうちに彼女は出ていくと言っていた。  一年に満たない同居でも、思いがけないほどに荷物は増えていたのか、朝出かけた時と比べて、出ていく彼女がなにかしら持ち出した今の部屋はがらんとぶっきらぼうな光景に戻っている。  今、私はホッとしているからきっと別れるのは正解だったんだ。  一緒に暮らすまでにはわからなかった彼女の性癖や、相容れない好みがある事を確かめる事ができたのはきっと有意義なだったんだと考えを巡らすけど。  たとえば会う時にしか見る事のなかった下着の色の選択すらも、それは普段のそれと同じなのか、まるで違うのかは、同居してわかった事で。  クローゼットを開ける度に、溢れるプライベートは見たくもないお互いのプライベートをさらけ出す。それまで私たちは、ハレの時間を意識しすぎていたんだと思い知らされる。二人で積み重ねる日常はもう輝きはない。
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