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目を閉じたら追ってくるのは、あの夏の──。
波の音って、こんなに重苦しかっただろうか。あの頃はあんなに軽やかで、涼しげに聞こえたのに。太陽の光も、攻撃的なほど眩しい。
──帰ってきたくなかった。こんな街。
それは、都会にすっかり慣れてしまったせいか、それとも、あの夏のせいか。高校最後の、夏のせいか──。
「夜!」
懐かしい声で名前を呼ばれる。振り向きたくはなかった。見たくなかった。他人のものになった幼なじみの姿を。
「……宇海」
やっぱり、振り向くんじゃなかった。
宇海の笑顔は全く変わっていなかったけれど、今の夜には攻撃的なほど、眩しかった。
……幼なじみは、同性と結婚するらしい。
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