第二羽 気づいたらカラスになっていた件

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第二羽 気づいたらカラスになっていた件

 今日は月曜日。憂鬱だ。  これから五日間、上司に怒られ、同僚には馬鹿にされる日々が始まる。  「始まりがあれば終わりが来る」という言葉があるが、あれは嘘だ。俺の散々な日々に終わりは来ない。来るとしたら、それは俺が死んだ時だろう。  さて、今日も怒られに行きますか。さて、まずはメガネをかけて……。  おや、メガネがうまく掴めない。というよりも、なんだかバサバサと鬱陶しい。俺は鳥を飼っていないぞ。なにせ、鳥アレルギーだからな。ならば、これはなんだ? 外からカラスでも侵入してきたか? あいつら、タチの悪いイタズラするから嫌いなんだよな。  もう一度メガネに手を伸ばして……。メガネのガラスに反射して見えたのは、カラスの姿だった。それもベッドに寝転んだ。  はぁ? カラスぅ? 俺が? まさか、冗談だろ、まだ夢の中にいるらしい。定番だが、ほっぺをつねってみるか。いや、つねることすら出来ない。  どうやら、俺はカラスになったらしい。そう、カミュの小説で主人公が巨大な虫になったように。  って、冷静に考えている場合じゃなかった。ひとまず、カラスになった理由は置いておいて、どうにかして人間に戻らなくては。  まずは一階にいる母さんに事情を説明しなければ。  ドンドンと母さんが足音が聞こえる。ラッキー、母さんが階段を登ってきたらしい。ドアが開くと、そこにはおたまを持った母さんがいた。  おたまが朝日を受けてキラリと輝く。うわ、眩しい。そうか、俺はカラスだった。カラスが吊るされたCDを嫌うのがやっと分かった。 「ちょっと、なんでカラスがいるのよ!」  母さんのおたまが振り下ろされる。 「カァ、カァー(ちょっと、母さん待ってくれ)」 「いつもウチのゴミにいたずらするだけじゃ飽き足らず、人様の家に入り込むとはいい度胸じゃない!」  やばい、これは話にならない。母さんは俺を殺しかねない勢いでおたまを振り回す。この場は退散するしかない。ひとまず玄関から外に出よう。  俺は玄関から外に出ようとするが、ある問題にぶつかった。そう、羽ではドアノブを掴むことすらできない。 「追い詰めたわよ……」  それは殺気だった母さんの言葉だった。  どうするよ、俺!
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