第5羽 哀れな青年を救え!

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第5羽 哀れな青年を救え!

 何でイタズラをしても俺の話でもちきりにならないんだ! こっちは昼食抜きで頑張っているのに。どうしたものか。そんな風に考え込んでいると、一人の子供が木に引っかかった風船を取ろうと必死にジャンプしているのが目に入った。なんてかわいそうなんだ。どれ、俺が取ってやるよ。  俺は風船についた紐をくわえると、子供が取れそうな高さにある枝に引っ掛ける。子供は俺を怖がっているようだが――カラスだから当たり前かもしれない――勇気を振り絞ってこちらに向かって歩いてくる。俺が電線に飛び移ると、サッと駆け寄り風船を大事そうに抱きかかえる。  子供はしばらく立ち尽くしていたが、「カラスさん、ありがとう」とつぶやくと母親のもとに走り去っていった。「ありがとう」か。なるほど、イタズラするだけでは話題にならない。そうなればすべきことは一つ。人の役に立つことをすればいいのだ。困った人を助ける。そして、悪い奴らを懲らしめる。これなら「カラス界の義賊」として名をはせるだろう。  おや、あそこに不良に絡まれている青年がいる。次はこいつだな。さて、頑張りますか。
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