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挨拶が遅れた理由? 存在を知らなかったからとは言えない。何か、ないか? この場をしのげる言い訳が。
「ここに来たのがつい最近でして。勝手が分かっておらず、失礼をいたしました」
うん、これなら無難だろう。我ながらナイスだ。
「それなら仕方がない。さて、ここに来たからには、お前にも私のために働いてもらわなければならない。まずは……そうね、そこの三羽の弟子として修業をつみなさい」
三羽ガラスの弟子!? 彼らは弟子ができることに感極まったのか、泣いている。こいつらのもとでまともに修業ができるのだろうか。ありえない。それだけは勘弁だ。
「お前は――失礼。あなた様は――」
訂正したが遅かった。隣にいたマスターは両翼で顔を覆っている。俺は覚悟した。恐ろしいことが身に降りかかることを。
「まあ、なんてことを! そんな呼び方されたのは久しぶりだわ。ゾクゾクしちゃうわ!」
……。
「あなた、もっと私をいじめてちょうだい!」
……。
なるほど、マスターが言った通り、ある意味恐ろしい事態になった。
「あら、お返事がないわね。まあ、これからいくらでも機会はあるから、よろしくね」
それだけは勘弁願いたい。
「まずは……そう、面白いイベントを考えてちょうだい」
面白いねぇ。抽象的すぎて困る。というか、カラスが面白がるイベントってなんだ? カラス界に詳しくないのに。まてよ、これならいける!
「みんなで人間にいたずらをしましょう。その中で一番面白いカラスが勝ち。これでどうでしょうか」
「うーん、抽象的だけど、それでいこうかしら」
いや、あんたの要望が抽象的だったからだよ!
「優勝したら、私を『お前』呼びする権利を与えます。クロ、頑張ってちょうだい」
うん、優勝しないように頑張ろう。そうしなければ、待ち受けているのは……考えるのはやめよう。さて、人間にいたずらしまくりますか。
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