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申し訳なさそうにキッチンに入ってくる彼をくるりと向こうへ向けさせ、「いいからいいから」と背中を押して洗面所に連れて行く。
「折角の再会なんだし、美味しいもの振る舞いたいんだよ。海はゆっくりお湯にでも浸かって」
近くに置いてあった服から適当に引っ張り出して彼にポンと手渡す。戸惑いながらも小さく頷く彼に「ごゆっくり」とだけ告げて扉を閉める。ほぼ勢いだけで流れに持っていってしまったが....
(はぁ....声、変じゃなかったかな)
ほんのり熱くなってきた頬に手を当てながら思う。冷静を装うとはしているが、未だ久々の再会で浮き足立つ気持ちでいっぱいだ。
「──よし。いい感じかな」
机の上に並べた二人分の料理を見て一息吐く。自分以外の人の為に料理をつくる日が来るなんて思ってもみなかった。彼が風呂に入っている間に何とかして料理を完成させた。我ながら上出来かも、と自画自賛しているとリビングの扉がガチャリと開く。
「わぁ....!ハンバーグだ」
「!」
ほんのりピンク色に染まった肌色が、貸した服の隙間からチラリと見え、思わず顔ごと視線を逸らす。いかん....そういう目で見てしまってはだめだ。俺は海の友達....友達なんだから。そう言い聞かせて彼を改めて直視すると、上半身の服一枚で彷徨いている事に気が付き咽せそうになる。「待っ....う、海、下は?」と途切れ途切れになりながらも慌てて聞くと、彼は席に着きながら首を傾げる。
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