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「今日は一限からだし...置き手紙でも書いておくか」
近くにあった雑用紙を手に取り、ボールペンでさらさらと書く。一緒に朝食をと思っていたけれど、最近バタバタしていてきっと疲れているだろう。折角だしゆっくり休ませてあげたい。
「行ってきます」
玄関で靴を履いて振り返る。シーンと静まり返った室内──でも今は海がいる。口角が緩むのを感じながら、背を向けて扉を開ける。ガチャンと扉が完全に閉まって数分後、寝室の扉が開き、眠たそうな海が「宝...?」とキョロキョロしながらリビングに入ってくる。
「ん...?」
机の上に置かれた置き手紙に気が付いた海は、スッと手に取り、書いていたメモを目で読む。
『海へ もし冷たかったら温め直して食べてね 今日の夜ご飯のリクエストあったらメールで送って 宝』
「.....お節介」
困った様に笑った海はメモをポケットに仕舞うと「頂きます」と作り置きの朝食を食べ始めた。こうして、海と同居生活を始めて新しい初日を迎えた。
「宝、なんか最近機嫌いいな。彼女でも出来た?」
大学に着いて早々、仲のいい友人、春樹がニタニタと揶揄いたくて仕方が無さそうな表情で見ながら言ってくる。彼女と言われて真っ先に何故か海が出てきて、飲んでいたスムージーを反射的に噴き出しそうになった。相変わらず、そういう事に関してはいちいち鋭い奴だ。
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