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「彼女なんて居ないしつくる予定もない。ただ...二年間ぐらい疎遠だった幼馴染と奇跡的に再会して一緒に住む事になった」
「え、幼馴染って....前に話していた奴?」
仲の良い春樹には海の存在については元々話していた。「色々気になる事は聞けたの?」とそわそわした様子で続けるが、ゆっくりと首を横に振る。
「聞こうと思ったけど....何となく聞ける雰囲気じゃなくて。海と一緒に居たい一心で何も聞かずに同居迄持ってった」
「お前....随分と強引な。ただでさえ距離を置かれていたのに、その幼馴染君はなんも言わないの?」
確かに自分でも強引だとは思ったけど、ああでもしないと海はまた自分から離れていってしまうと思ったから。
それに....海は再会してからも、あの頃と変わらず笑ってくれている。もう俺は間違えない。海と一緒にあの頃の続きを何事も無かったかの様に送るんだ。
「.....海が自分の本心を話してくれる迄待つよ。俺はどんな海とでも一緒に居たい」
「そこ迄宝がゾッコンな海ちゃん、俺もいつか会ってみたいな」
「いつか、ね」
ふふ、と海の笑う姿を思い浮かべながら返す。
海、もう起きてご飯食べたかな。
今頃何をしているんだろう。
春樹は呆れた様に「おーい」と自分の顔の前で手をひらひらと振る。頭の中は既に海でいっぱいになっていた。
「──ただいま」
大学の講義が終わって真っ直ぐに家に帰宅する。家に帰るのがこんなにも楽しみになる日が来るなんて思いもしなかった。
玄関に足を踏み入れ、リビングに入り彼の存在を確認するが誰も居ない。シンク横には既に洗われた状態の皿が綺麗に並べられている。シーンと静まり返った室内で立ち尽くした自分は、海が居ない事に改めて気が付き青褪める。
「う、海──」
「わ。.....びっくりした」
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