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恋と呼ぶには不確かで
どちらも大切で、どちらもほしくて。
これを何と呼ぶのか、自分でもわからない。
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雨の日は嫌いだ。
周囲の音をかき消すような雨音が耳障りで憂うつに沈んでいく。紺色の傘の内側にある自分だけの空間にも音は侵入してくる。
どうしても、感傷的になってしまう。うぜーなって思っても、なってしまうもんは仕方ない。
ひとりで帰るようになって、もうだいぶ経つ。友達がいないわけじゃないから、毎回ひとりというわけじゃないにしろ、いつも隣にいた2人がいない帰り道にもすっかり慣れてしまった。――なんて、嘘だ。未練がましく、いまだ慣れていない。
ふとしたときに隣に目をやって、そうだったと思い出す度に苦しくなる。虚しいったらない。いい加減慣れるか、声をかけて帰るかどっちかにたい。だけど、オレから一緒に帰ろうと声をかけたとして、現実が期待したものと違ったら怖かった。慣れることもできていない。そんなのをずっとずるずるとやって、結局は今日もひとり。
3人でいられなくなったのは、他でもない、オレのせいなのに。今さらどの面さげて会いに行けばいいんだ。
赤信号で足を止めた。雨で視界がぼんやりしている。
半年前、ここで同じように信号待ちをしていたときには隣にあいつがいた。
――『オレ、美雨と付き合う、ことになった』
3人だと緊張するからと美雨には先に帰ってもらい、晴臣と2人での帰り道。話があるなんて言っておきながら、なかなか切り出せずにいるオレを辛抱強く待っていてくれた晴臣。
ようやく報告できて、ホッとしたのも束の間。
――『……良かったな』
どうにか貼り付けたような晴臣の笑顔を見て、心臓をつかまれたような気分になった。程なくして、一緒に3人で帰る毎日から晴臣が消えた。
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