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私、川合藍菜(高校2年生)は、男子バレー部のマネージャーをやっている。
いつものように、練習が終わって後片づけをしていると、同じバレー部の同級生・早河昂貴に声をかけられた。
「川合。今日、帰るの急ぐ?」
「ん?ううん。別に」
「じゃあ・・・、話があるから、片付けの後、少しだけ残ってくれる?」
・・・なんだろう。
今度の合宿についての話かな。
わからないけど、断る理由はなにもないので、私は「わかった」と返事した。
「・・・で、なあに?」
他の部員が帰った後の、私と早河、2人だけになった体育館。
「残れ」って言ってきたくせに、なかなか用件を伝えてこない早河に、私は、しびれを切らして問いかけた。
「あー・・・」
早河は、落ち着きない様子で額をかくと、向かいのコートのライン上を指さした。
いつの間にか、スポーツドリンクのペットボトルが1本置いてある。
「・・・、えっと。ここからサーブ打ってあそこのペットボトルを倒したら、オレと・・・、付き合ってほしいんだけど」
「・・・へっ・・・?」
思ってもいない用件だった。
早河は、真っ赤な顔で「いい?」って私に聞いてくる。
(・・・『いい?』って・・・)
早河は、少女漫画に出てくるヒーローみたいな顔立ちだからか、それこそ、漫画みたいな告白をしてくるんだなって思った。
とてもびっくりしたけれど、私はすごく嬉しかった。
だって・・・私も、早河のことが好きだったから。
「・・・わかった。いいよ。でも、倒したら、だからね」
そんな条件、なくても「いい」って返事をしたいところだけれど、早河から「倒したら」って条件を付けられているのだし、照れくさい気持ちもあって、私は、『仕方ないな』って感じで返事した。
それでも、早河は嬉しそうな顔をして、「おっしゃ!」と強く意気込んだ。
「絶対倒すから」
ちょっとかっこつけた顔をして、早河は、ボールを持ってサーブの準備に取り掛かる。
私はこっそり、胸の前で祈るように両手を組んだ。
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