告白

1/5
前へ
/5ページ
次へ
私、川合藍菜(かわいあいな)(高校2年生)は、男子バレー部のマネージャーをやっている。 いつものように、練習が終わって後片づけをしていると、同じバレー部の同級生・早河昂貴(はやかわこうき)に声をかけられた。 「川合。今日、帰るの急ぐ?」 「ん?ううん。別に」 「じゃあ・・・、話があるから、片付けの後、少しだけ残ってくれる?」 ・・・なんだろう。 今度の合宿についての話かな。 わからないけど、断る理由はなにもないので、私は「わかった」と返事した。 「・・・で、なあに?」 他の部員が帰った後の、私と早河、2人だけになった体育館。 「残れ」って言ってきたくせに、なかなか用件を伝えてこない早河に、私は、しびれを切らして問いかけた。 「あー・・・」 早河は、落ち着きない様子で額をかくと、向かいのコートのライン上を指さした。 いつの間にか、スポーツドリンクのペットボトルが1本置いてある。 「・・・、えっと。ここからサーブ打ってあそこのペットボトルを倒したら、オレと・・・、付き合ってほしいんだけど」 「・・・へっ・・・?」 思ってもいない用件だった。 早河は、真っ赤な顔で「いい?」って私に聞いてくる。 (・・・『いい?』って・・・) 早河は、少女漫画に出てくるヒーローみたいな顔立ちだからか、それこそ、漫画みたいな告白をしてくるんだなって思った。 とてもびっくりしたけれど、私はすごく嬉しかった。 だって・・・私も、早河のことが好きだったから。 「・・・わかった。いいよ。でも、倒したら、だからね」 そんな条件、なくても「いい」って返事をしたいところだけれど、早河から「倒したら」って条件を付けられているのだし、照れくさい気持ちもあって、私は、『仕方ないな』って感じで返事した。 それでも、早河は嬉しそうな顔をして、「おっしゃ!」と強く意気込んだ。 「絶対倒すから」 ちょっとかっこつけた顔をして、早河は、ボールを持ってサーブの準備に取り掛かる。 私はこっそり、胸の前で祈るように両手を組んだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加