19人が本棚に入れています
本棚に追加
スローインの指示がされて、私達は必死に食らいついた。
五秒、四秒、三秒、二秒……。
あと少し! そう思ったところで、わずかなスキからボールはスローインされてしまった。
「まだここから!」
ミナの合図で、ボールを持った相手に、私とミナでダブルチームにいく。
相手だって疲れている。
こんなタイミングでダブルチームなんてされたら、相手だってしんどいはず。
ミナと力を合わせて、相手のパスコースを完全につぶした。
あと少し! そうしたらバイオレーションになる。
そう思ったのに、ミナが疲れからか、ガクッと身体が傾いてしまった。
そのすきに相手がすぐさまパスを出す。
やられたっ。
そう思った瞬間、マヤがそのパスコースに手を伸ばした。
「スティーーーールッ!」(※3 )
マヤの動きにベンチが活気づく。
残り時間はもう少ない。
この攻撃を逃してしまったら、次の攻撃はもうない。
「ハルッ!」
マヤが私にとボールを託す。
スリーポイントなら、ミナの方が正確性は高い。
だけどそれを待っていたら相手に追いつかれてしまう。
みんなの思いがこもったこのボール、落とすわけにはいかない。
お願い。入って……!
逆転の願いを込めて、スリーポイントラインの外から、ゴールへとシュートを放った。
時間はもうないはずなのに、そのボールはスローモーションのように、ゆっくりと弧を描き、そしてゴールネットを揺らしてシュートが入った。
残り時間ゼロ。試合終了の笛と同時のことだった。
※3.スティール…相手のボールを奪うこと。
最初のコメントを投稿しよう!